塾で知り合った私の友達には
精神が不安定な子が一人いる。
友達は多いが広く薄い付き合いしかない。
そんな子と私はいつからか一緒に絡んでいた。


その子は4歳のとき両親が離婚し、母に引き取られた。

父親がその子に言った最後の言葉は
「ごめんな。いつか必ず迎えに来るからな」。
その子は今でもこの言葉を信じていると彼女自身が言った。
しかしそのまま帰らぬ人となり父親は最近亡くなった。

その子が10歳になると母親は別の男性と結婚した。
その男性もつい最近亡くなったらしい。

大切な人がその子に出来た。
実際メールのやり取りをしているのを見たことが何度かあった。
その子の中で唯一の笑顔が見れた気がした。

しかしそんな笑顔を覆す出来事が起きた。

大切な人さえもこの世から消えた。


二人きりになった時、その子は私に泣きつきながら、こう言った。
「あなたもいつかはきっと居なくなってしまうんだ。
自分が本当に心から信頼した人間はみんなこの世から居なくなるんだから」

私はただその場に立ち尽くして、泣いていたその子の頭を撫でてあげる事しか出来なかった。
それが今になると悔しくてたまらない。
なにも言えなかった自分が。
自分もいつかはこの子の目の前から居なくなってしまうのかもしれない。
少しでもそう思った自分が情けなくて。


その子はメンタルサイトを運営しだした。
サイト内には血に濡れた沢山のその子の腕の画像。
日記には苦しい助けて死にたいと更新される日々。

人はその子のそんな一面を知って「異常者」だと非難する。

「異常者」と「通常者」。
いつからそんな風に人は境界線を引いたのだろう。


だけど私は思う。
この子は何も悪くない。
悪いのは親。
悪いのは運命。

それの為にこの子が血を流す必要はない。

そして私はその子に今度はちゃんと、言いたい。


我慢なんかしなくていいんだよ。
自分を傷つけることは決して悪いことじゃないんだから。
だけどいくら傷つけても変わらないよ。
前に、前に行かなきゃ。
前に行けなくなったら私が後ろから押してあげるよ。
私はあなたの後ろから居なくなったりしないから。